五島列島の自然の中で、私はムクナ豆、菊芋、まこも茶などを育てています。 「五島列島自然のめぐみ」として取り組んでいるこの農業は、 単なる商品づくりではありません。
私が農業を始めたきっかけは、自分自身の体調を大きく崩した経験にあります。 移住後、病気で倒れ、これからの暮らしを見つめ直す中で、 自然の恵みと出会いました。
自分が元気を取り戻すきっかけになったものを、 同じように必要としている人へ届けたい。 その想いから、五島の畑での挑戦が始まりました。
耕作放棄地を、五島の可能性に変えたい
五島では、人口減少や高齢化により、 使われなくなった畑や農地が少しずつ増えています。 私は、こうした耕作放棄地を地域の大きな課題だと感じています。
ムクナ豆は、比較的手間をかけずに育てることができる作物です。 土地さえあれば、高齢者や農業未経験者でも挑戦しやすい。 だからこそ、私はこの作物に大きな可能性を感じています。
五島には、ブロッコリー、芋、かぼちゃなど、素晴らしい農産物がたくさんあります。 その中に「五島のムクナ豆」も加わっていけば、 新しい地域資源になるのではないかと考えています。
眠っている農地を活かし、島の人が副業として育てられる作物にする。 それは、単なる農業ではなく、 五島の資源をもう一度動かす取り組みでもあります。
農業を、シニア世代の新しい役割に
私はもともと農業経験があったわけではありません。 現役時代は、医療機器などの販売に携わっていました。 年金生活に入り、五島へ移住してから、畑に立つようになりました。
最初は分からないことばかりでした。 それでも、試行錯誤を重ねながら作物を育て、 商品化し、販路を探し、少しずつ今の形をつくってきました。
年齢を重ねても、地域のためにできることがある。 農業経験がなくても、挑戦できることがある。 私自身の歩みを通じて、そのことを伝えていきたいと思っています。
福祉とつながる仕事づくり
私が目指しているのは、自分たちだけが利益を得る農業ではありません。 将来的には、商品の袋詰めや梱包、発送などの作業を、 福祉事業所や障がいのある方々の仕事につなげたいと考えています。
農作物を育てる人がいる。 加工する人がいる。 梱包し、届ける人がいる。 その一つひとつの工程が、島の中で仕事を生み、 誰かの役割になっていく。
機械化によって効率を上げることも大切です。 しかし私は、できる限り「人の仕事」として地域に還元したいと思っています。
それは、五島の中で支え合う経済をつくること。 そして、農業と福祉が自然につながる仕組みを育てることでもあります。
健康の島・五島を目指して
私が何より大切にしているのは、 「五島を健康の島にしたい」という想いです。
自然の中で育った作物を、日々の食生活に取り入れる。 自分で育てられる人は、自分で育てる。 必要な人には、商品として届ける。
そうした小さな積み重ねが、島の人たちの健康意識を高め、 将来的には医療や介護の負担を減らすことにもつながるかもしれません。
もちろん、食品である以上、特定の病気への効果を保証するものではありません。 しかし、毎日の暮らしの中で自然の恵みを取り入れ、 自分の体と向き合うきっかけをつくることには、 大きな意味があると考えています。
儲けるためだけではなく、五島の未来のために
私は、ムクナ豆の苗を無料で分けることもあります。 それは、自分たちだけが作って売るためではありません。 多くの人に知ってもらい、五島全体に広げていきたいという想いがあるからです。
ただし、広がれば広がるほど大切になるのが品質管理です。 未熟な豆や品質の不安定なものが出回れば、 ムクナ豆そのものの評価が下がってしまいます。
だからこそ、作り手を増やしながらも、 きちんとした栽培方法を伝え、 一定の品質を守る仕組みをつくっていきたいと考えています。
将来的には、五島の中で栽培する人を増やし、 私たちが買い取り、責任を持って販売していく。 そんな地域循環型の仕組みをつくることも視野に入れています。
次の世代へつなぐために
私には子どもがいません。 だからこそ、この取り組みを次の誰かへつないでいきたいという想いがあります。
ただし、求めているのは「儲かるから引き継ぎたい」という人ではありません。 五島を元気にしたい。 農業を通じて地域に貢献したい。 福祉や健康づくりにもつなげたい。
そうした想いを共有できる後継者を育てることが、 私にとって大きな目標です。
現在は、夫婦二人で農作業、加工、販売、発送まで担っています。 決して楽な道のりではありません。 それでも、あと数年は自分の手で基礎をつくりたいと思っています。
小さな畑から、地域を変える挑戦
「五島列島自然のめぐみ」の取り組みは、 健康食品を販売するだけの事業ではありません。
耕作放棄地の活用。 高齢者の生きがいづくり。 副業としての農業。 福祉との連携。 島内での仕事づくり。 そして、健康意識の高い島づくり。
一つの商品には、これだけ多くの地域課題への可能性が込められています。
五島の自然が育てた作物を、五島の人が育て、五島から全国へ届ける。 その循環を少しずつ広げていくことが、私の願いです。
自然の恵みを通じて、人も、畑も、地域も元気にしていく。 それが「五島列島自然のめぐみ」の生産者としての想いです。