
【長崎支局】「この年になって農業を始めるなんて夢にも思わなかった」と顔を見合わせながら笑うのは長崎市から五島列島へ移住した五島市籠淵町の松本和人さん(78)・文子さん(77)夫妻。健康志向の高まりを背景に注目されるムクナ豆の栽培・加工に取り組んでいる。
転機となったのは和人さんが脳梗塞で倒れたことだった。退院後も調子が戻らず心配していた文子さん。そんな時、県外の友人からムクナ豆が送られてきた。煮たり、つぶしたりしながら食べ続けたところ、「体の調子が戻った気がした」と当時を振り返る和人さん。
この経験をきっかけに2人はムクナ豆について学び、自ら栽培に挑戦。農業経験ゼロからの挑戦だったが、地域の耕作放棄地や、使われなくなったハウスの骨組みを活用しながら栽培を始めた。収穫後は販売用に粉末加工作業も行い、一貫した経営に取り組んでいる。
作物は農薬を使わないで栽培。「島の人たちに元気になってほしい」という思いや商品の評判が口コミで広まり、五島列島内の直売所や地域店舗だけでなく、関東や東北からも注文が入るようになった。ムクナ豆に加え、マコモ、キクイモ、ヤーコンの栽培・加工販売にも取り組み、今年からは黒ニンニクもラインアップに加わる予定だ。
友人や知人へ分けたところ、「体調が良くなった」と声もあり、病気を経験した人に少しずつ紹介していくうちに、ムクナ豆の栽培に取り組む人も増えていった。「教えきれないくらいの人に教えた」と和人さん。「ムクナ豆で五島の人たちが元気になってくれたらうれしい」と松本さん夫妻は話してくれた。